COLUMN

~宮地陽子のGO FOR 2020~海外日本人選手奮闘記

~宮地陽子のGO FOR 2020~海外日本人選手奮闘記

渡邊雄太の今、そして2020へ
<後編>

3月10日、ジョージワシントン大はA10トーナメント準々決勝で敗れ、目標としていたNCAAトーナメントには手が届かなかった。去年出場したNITのひとつ下のCBIトーナメントに出場することになったが、それが終わると、渡邊のアメリカ4年目、大学3年目のシーズンも終わりを迎える。

今シーズンは、チームに最も長く在籍している選手として、また上級生の一人として、単に1選手として自分のプレーをするだけでなく、コート内外でリーダーとしての役割も意識したシーズンだった。

シーズン半ばで、渡邊はこう言っていた。
「自分も、そんなに声を荒げてみんなを引っ張っていくほうではないんですけれど、ただ、去年は4年生の背中を追いかけていっていた感じだったので、今は、自分がそういう立場になれるようにと思っています。特に1年生にはできるだけ声がけをしたり、たくさんコミュニケーションをとるようにしたり、そういう部分でリーダーになるようにやっています。コート上では、去年の4年生がやってくれたように、背中でみんなを引っ張っていけたらと思っています。
アウェイ(遠征)のときのホテルが1年生の選手と同じ部屋で、その1年生が最近ちょっと悩んでいて、僕に相談してくれたんです。それで、そいつとはよく話をして、こういうところをなおしたほうがいいとか、こういう部分はすごくいい部分だからそれを伸ばせばいいとか、そういうことは声かけしたりしています。
自分も1年生のとき、特にA10カンファレンスの試合が始まってからすごく悩んでいた時期があったので、1年生がどれだけ大変かっていうのもわかりますし、自分が助けられるなら助けてあげてあげたいと思っているので。
アメリカでは日本に比べて、先輩、後輩みたいな関係はすごく薄くて、1年生でも4年生に対して平気で(自分の考えを)言ったりします。お互いに遠慮なしで話し合えるんで、逆にすごくやりやすく感じます」

プレーの面でも、年を追うごとにできることの幅が広がってきた。

「1年生のときは、あまりたくさんのことをしようと考えずに、まず、自分のひとつ得意なこと(シュート)を見つけて、そこの部分で活躍できればいいなと思っていた。結果、それで1年生のときから20分弱は試合に出られた。去年はそれに加えてディフェンスができるようになり、周りからも認められるようになった。今年はそれプラス、リーダーシップであるとか、もっと得点に絡んでいくといったことをしたい。年々、自分のできることが増えていくにつれて、役割もどんどん増えていっているんで。そこは、引き続き自分のできること、自分の武器をもっと増やしていきたいと思っています」

その結果、出場時間(平均34.9分)、得点(12.1)、アシスト(2.4)、リバウンド(4.7)、スティール(1.1)、ブロック(1.2)と、すべての分野でキャリア最高の数字を出し、ディフェンスでもマンツーマンでは相手のエースを守り、1-3-1ゾーンでは、要となるトップを守った。その実績が認められ、A10カンファレンスのコーチたちによる投票でカンファレンスのオール・ディフェンシブ・チーム5人の中に選ばれた。今シーズンが始まる前に目標としてあげていた賞だ。

「オール・ディフェンシブ・チームは目標のひとつだったので、受賞できて嬉しいです」と渡邊は言う。

個人的にも、チームとしても、手ごたえがあっただけに、A10トーナメント敗退は悔しかった。負けた準々決勝のリッチモンド戦では、残り5.8秒、1点を追いかける場面でボールを手にし、攻撃を仕掛けたが、相手にスティールされてしまった。映像で見ると、スティールの際に明らかにファウルされていたが、ノーコール。それも含めて、NCAAトーナメントという目標を達成することがどれだけ難しいことなのかを痛感した。
「今シーズンも中盤得点があまりとれなくて苦しい時期もありましたが、終盤に向けてしっかり修正できたのは良かったと思います。チームとして終盤に向かってどんどん良くなっているのが中にいてもよくわかりました。それだけに、(A10トーナメント準々決勝の)リッチモンド戦で活躍できずに、しかも、自分のミスで負けてしまったことは悔いが残り、今でも本当に悔しくて、情けないです。いい雰囲気でトーナメントに臨めてただけに、余計に悔しい負けでした。今年もNCAAまであと一歩まで近づけていたとは思うんですが、やはりあらためて簡単な道ではないと感じさせられました」

アメリカにいても、いや、アメリカにいるからこそ、日本のバスケットボールのことはいつも気にかけている。
日本代表としても、2019年FIBAワールドカップ、2020年東京五輪に向けた日本代表候補に選ばれ、今後の日本代表を率いていく存在として期待されている。
今年秋から始まるFIBAワールドカップ予選からは、シーズン中にも試合が行われるようになるため、NCAAのシーズンと重複するという問題はあるが、タイミングが合えば代表としてプレーしたい、自分が成長することで日本代表強化に貢献したいと、その意気込みも語る。

「(Bリーグができて)日本のバスケットボールがすごく盛り上がっているというのを感じますし、日本を強化していこうっていう意気込みもすごく感じます。
自分も代表としてもプレーしたい気持ちはある。今の優先はこっち(NCAA)なので、NCAAシーズン中に試合を抜けて代表としてプレーするのは正直厳しいけれど、タイミングがあえば、自分も代表のユニフォームを着て試合に出たいなと思っています。自分がもっと成長すれば、日本代表をもっと助けられると思いますし、今、(八村)塁もゴンザガで頑張っているなど、アメリカで活躍している選手が増えてきた。アメリカでやっている分、国際経験はたくさん積めているんで、そういうのをしっかり代表に持ち帰って、活躍できるようにしたいなと思っています」

大学の先には、今も変わらずNBAを意識し、目標としている。そんな渡邊にとって、NBAへの道を示してくれた先輩が、昨シーズンまでチームメイトだったアルゼンチン人のパトリシオ・ガリーノだ。NBAのサマーリーグに出場し、サンアントニオ・スパーズのトレーニング・キャンプにも参加した。開幕ロスターには残ることができなかったが、スパーズ傘下のDリーグ・チームでプレーし、NBA入りを目指している。
ガリーノでもNBAに入れなかったことでNBAの壁の高さを感じているかと思いきや、むしろ、知っている選手がNBAの一歩手前まで近づいたことで、それまで漠然とした目標だったNBAを、身近に感じるようにもなったという。

「パト(ガリーノ)が、もう少しでスパーズだった。チームメイトで毎日いっしょにやっていたパトが、あそこまで行ったので、自分も可能性があるんじゃないか。パトは本当にすごいんですけれど、自分でもやれるんじゃないかという自信もあります。他にも去年、試合でマッチアップした選手がNBAのドラフトにかかったりとかしているので、大学でやっていて、確実に自分の夢に近づいていると思います。(来年春に)卒業した後は、NBAにとことんこだわって、アメリカでやっていきたいと思っています」

映像はWOWOW NBAオンラインへ
http://www.wowow.co.jp/sports/nba/video/